[社説] 春秋(2021年3月31日)
「9月入学」が議論になると、必ず出てくるのが季節感の問題だ。昨年、改革論が急浮上したときも、反対意見のなかに「入学式は桜の下で」と唱える声が目立った。別に日本古来の伝統というわけではないのだが、桜の舞う風景は新学期の記憶と強く結びついている。 ▼もっとも、こうしたイメージは近年の実情とずいぶんズレてきた。東京などではソメイヨシノの開花が3月中旬、満開は春分の日あたりというパターンが珍しくない。現に今年もあちこちで花の盛りを過ぎ、枝先には葉っぱがのぞいている。小中学校の入学式のころには、少なからぬ地域で散り果ててしまうかもしれない。 ▼気象庁が5月19日から使う「新平年値」を見ても、変化は明らかだ。現行の平年値は1981~2010年の平均だが、10年ごとの更新で91~20年を対象にするという。年平均気温はいまより0.1~0.5度高くなり、桜も早咲きが進む。流れが加速すれば、この基準を使っ..