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イタリアはフィレンツェ、ルネサンス初期の小さな教会に「救援の聖母」という絵がある。冷たい目つきの聖母が怪物をたたきのめさんと、こん棒を振り上げる。おびえる幼児が彼女のマントにしがみつく。子を抱く優しげなイメージとはほど遠い異色の聖母像である。

そのころ子供の致死率は驚くほど高かった。子を救う聖母像やおびただしい奉納画などが残るゆえんだ。病気や事故、貧困や暴力の犠牲になる子の姿は、近代にいたるまで美術に描かれ続けた。いつの時代も子供期とは「人生の特に脆弱な段階として意識されていた」のだ(エリカ・ラングミュア「『子供』の図像学」)。

その名も「子ども庁」という。子育て支援策などを担う組織の創設を検討するよう首相が与党に指示した。所管する省庁の垣根を越えて保育の充実、貧困や虐待、いじめといった問題に根本から取り組もうというなら大歓迎だ。おおいに議論を深めて「選挙パフォーマンスではないか」と勘ぐる声など吹き飛ばしてほしい。

たとえば日本では18歳未満の7人に1人が貧困状態にある。先進7カ国の中でも高い水準だが、事実を知らない人は今も少なくないと児童福祉に詳しい山野良一さんはいう。子供自身が声をあげるのは容易なことでない。ならば彼らの窮状を可視化し未来図を示すのは大人の役割だ。さて子ども庁はどんな絵を描くだろう。

 

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