hegoeshard

改めて活字に起こすのはためらわれたが、16年前ドラマで聞いた台詞(せりふ)は衝撃だった。「バカとブスこそ東大に行け」。暴走族あがりの弁護士が、経営立て直しに乗り込んだ三流高校の落ちこぼれ生徒に向けて言い放つ。人気漫画を原作とした「ドラゴン桜」の第1話だ。

この世は能力主義でヒエラルキーが決まる。ただし、トップに立つための入り口=受験の機会は平等だ。芸やスポーツで身を立てるなんて本物の才能ある人間にしかできない。凡人こそ一生懸命、勉強してノウハウを覚え「学歴」という実力証明書を手に入れろ――。言葉遣いは乱暴だが社会の一理を突いている気がした。

東大は学歴・能力主義の頂点の象徴で、別に他の難関大学でも医学部でもかまわない。努力だけは誰でもできるし、チャンスは平等なのだから、と挑戦を促す理屈は当たり前のようでもある。だが果たして本当にそうか。米ハーバード大のサンデル教授が近著「実力も運のうち 能力主義は正義か?」で疑問を投げかける。

努力できる人はそもそも環境に恵まれた人ではないだろうか。また成功者はすなわち努力した人と称(たた)える風潮が過ぎると、社会は逆に不遇な人々を努力が足りないと見下すようになる。蔑まれた側はエリートたちを敵視し、社会の分断が深まっていく。折しも放送が始まったばかりの令和版「ドラゴン桜」の展開はいかに。

공유하기

facebook twitter kakaoTalk kakaostory naver band