[社説] 春秋(2021年3月27日)
世界で最初の経済バブルは、17世紀半ばにオランダで起きた。チューリップバブルである。合理的で無駄づかいを嫌うお国柄で知られる人々が、植物の球根に狂乱した。先物取引も登場、たった1個に邸宅が買えるほどの値段がついたというから、なんともすさまじい。 ▼特に人気だったのが花びらに赤、白、紫など色鮮やかな縞(しま)模様が出るタイプ。世に二つとない美しい柄が珍重された。実はアブラムシが媒介する植物ウイルスによる病だったが、当時は知る由もない。「人々が競って買い求め、いたるところにウイルスに感染した植物を広めた」と山内一也著「ウイルスの意味論」にある。 ▼最古の経済バブルにはウイルスが大きくかかわっていたわけだ。しかもこの植物ウイルスの遺伝子はRNA型。新型コロナと同じで、ころころと変異する。変わり身の速さで生き残る戦法は無敵である。一方、RNAよりはるかに安定したDNA型を持つ人間は、簡単に変わ..